Þe Hƿmanitī

The world began without knowledge, and without knowledge will it end.

DMTのトリップ体験について、2016年12月、1回目

はじめに

 ブログ読む前にDMTが何か知らない人はこれ読んで → アヤワスカ - Wikipedia

 

 ※このブログはフィクションであり、筆者、またはその他の人物の経験に基づくものではありません。違法薬物の摂取や市販薬・処方薬のオーバードーズは人体に甚大な影響をもたらします。当ブログは、閲覧した人物に対しいかなる薬物の摂取も推奨するものではなく、薬物の身体への影響を架空の人物の視点から語ることで、薬物の恐ろしさを啓発しようという意図のもと投稿されています。

 

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初めての幻覚剤

 詳細は省くが、2016年当時、ある植物の根のパウダーを煎じ、抗精神病薬と併せて飲むことで、誰でも合法的にDMTを経口摂取することができた。

 幼少の齢よりLSDマジックマッシュルームのような幻覚剤を摂取することを夢見ていた僕は、その当時引きこもってキーボードを叩き続けていたため、様々なインターネット、とりわけ薬物に対しかなりの情強と化していて、当然その情報にもリーチすることができた。ついでに合法DMTを体験したことのある人々のフォーラムを見ると、あまりにも現実離れした経験談の数々が寄せられている。幽体離脱サイケデリックスペース。少年の心にはあまりにも刺激的な言語の羅列。

 鬱病のドン底だったにも関わらず、当時の僕はこれに激しい興奮と抑え切れない衝動を覚え、頻繁に過剰摂取していた風邪薬を投げ捨てて秒で必要物を用意し、17歳の純朴な好奇心とともに幻覚物質入りの植物を煎じた「お茶」を作ったのだった。

 

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 初めてのトリップは本当に美しかった。視界に入る物体一つ一つの解像度がシラフとは明らかに違う。机の上にあった飲みかけの水をペットボトルの中でひっくり返すと、理解できないほど透明な奔流が、1フレームごとに感動的な形状を描いていた。とはいえ重力に逆らいボトルの上部に残ったほんの少しの水滴たちが、こちらを見ながら色収差を生じさせている。DMTを摂取する前に焚いていた、白檀のお香から漂ってくる甘い香りと微かな煙の匂いが脳髄を衝き、視界を黄色く融かしていく。

 ポエムだ、と思った。感覚したものすべてをポエムにして唄いたいほどの強い感動が視界から、嗅覚から、味覚から絶えず喚起され、それに呼応した顔が終始ニヤついていた。上代日本人は事あるごとに感動し歌を詠んだらしいが、まさにそれだった。DMTをキメたら上代日本人になっちゃった。悪くないパンチラインだ。ツイッターで呟けば4いいねぐらいはつくだろう。

 

 目を閉じれば、世界に自分だけしかいないかのように外方向に対しての感覚が閉じ、意識とは別の何か(*)が幻覚それも視覚だけではなく、五感が統合された未知の感覚のようなものをものすごい早さで生み出し、それを自我意識に対してひっきりなしに投げつけてくる。 

*: 幻覚剤をやった人間がよく「神」「絶対者」と呼ぶもの:幻覚を自分の意思とは関係なく操作する何か:おそらく、その正体は中枢神経系の自我意識を生じさせる部分以外の高次機能を司る部分

  そしてその幻覚とは、自分というものの構成素である、僕に関する無数のパラメータが、永遠に振れつづけて規則的な三角波の波形を描き続ける様子だった。おそらく、当時パソコンで楽曲制作をしていて、頻繁に音声波形を目にしていたのが幻覚に反映されたのだろう。その無限とも言える数の波形の浮き沈みは、自分というものが絶えず変化しているという無常の世界観を示唆していた。今でもその世界観への確信は消えていない。

 

 ところで、目を閉じて閉眼の幻覚に身を任せていることには1つだけ難点があり、というのも、呼吸という行為を忘れてしまうことだった。

 シラフであれば、呼吸というものはわざわざ意識的に行わなくとも無意識にうまくいっているものだが、DMTが効いているとそうではなかった、というか、そうではないという強迫観念に執われるのである。

 そして、意識しなければ呼吸を止めてしまうという焦燥は幻覚を蝕む。感情は幻覚の大まかな方向性を決定するので、焦ったり恐怖したりすると幻覚はより強迫的に自我へ迫り、より恐ろしく変化する。それを受けて自分はより恐怖する……という抜け穴のないスパイラルに陥る。世に言うバッドトリップの典型だ。

 ただ、今回はDMTの摂取量があまり多くなかったことが幸いし、幻覚の方向性が大きくバッドに振れることはなかった。これが災いし、DMTに対する自分の”ナメた”態度を形作ってしまい、のちに激しいバッドトリップを経験することになるのだが……。

 

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 以上のように、初めてのDMTはさしたる問題もなく終了した。wiredのような海外の雑多なサイトには、幻覚剤の経験後に鬱が寛解するとか、精神が真っさらになるとかいうすごそうな記事がよく書かれているが、摂取量の少なさも影響しているのか、今回においてそこまでの変化は無かった。

 しかし、上にも書いたように、幻覚によって無常的な世界観が植え付けられた、もしくはそう”洗脳”されたということもあり、思考の基盤となる世界観や価値観が多少なりとも変化させられてしまうというのは事実のようである。そして、その変化がとてつもなく大きかったのは次の2回目のトリップなのだが、それについては次回書く話なので、これを読んでいるオタクくんは指を咥えて僕が次回を書くやる気を出すのを待っていてほしい。

次回はこちら↓

sensesthetique.hatenablog.com